万年雪を抱く1,980mの霊峰月山を遠くに望み、そこからの雪解け水が寒河江川を流れ田畑を潤す、良質の米と水に恵まれている土地である。また山形盆地により日本の季節感がはっきりしていることや夏場は特に昼夜の寒暖差が大きいなど、高品質な米や果樹が育つ条件を満たしています。この恵まれた土地柄を活かすため山形県産米だけを使用し、手間をかけた手作りの地酒を醸しています。
「豊国」は、1903年に山形県旧余目町で育種された水稲で、大正時代には山形県の三大品種の一つとなりました。タンパク質が少なく大粒で酒造米として非常に適していました。
戦後になると稲が倒れやすいなどによる栽培の合理化から次第に作られなくなり消滅しました。しかし創業の原点となる酒米であることから、1990年に種もみを入手して復活させました。現在は「豊国耕作者の会」を組織し、田植えから一緒に米作りに関わっています。
当社の本家は1700年初旬に山形市で創業し、その後寒河江の“豊国”と“寒河江川の水”を求めて進出したと言われています。当時の寒河江には至る所に水が湧き出ており、その水質は酒造用として非常に優秀であったと伝わっています。現在ではドイツ硬度3.4程度の中軟水として純米酒の製造に適した水であり、それを仕込み水とした日本酒は全体として淡麗できれいな酒質になっています。
新米が入ってくる10月中旬から精米が始まります。自動精米機により扁平精米のプログラムで全量自社精米を行います。仕込み前日に洗米・浸漬を行います。洗米機を使用、浸漬は酒米の種類、精米歩合を考慮して大部分が限定吸水になります。
昔ながらの甑(こしき)を使用。さばけが良く外硬内軟の蒸米をつくるため最後に乾燥蒸気を当てるようにしています。甑底部に擬似米を使用して蒸気を当てる時間を調整しながら約50分間で蒸し上げます。
蒸上がった酒米はその時の気候やその後の工程にあわせて放冷機、または自然放冷により、温度と触り心地で調整をして、麹、酒母、掛け米に振り分けられます。
蒸米に種麹をふって、温度と湿度を管理しながら手作業を繰り返し、約55時間で米こうじが出来上がります。種麹は目的に合わせて数種類を使い分けています。
基本的には速醸系酒母を多く使用しています。酵母は目的とする酒質に合わせて協会酵母と山形酵母を使い分けています。商品コンセプトによって生酛・山廃酒母も製造・使用します。
総米600kg~1,500kg仕込が中心になります。開放タンクを使用した昔ながらの仕込みが中心になっています。
冬期間に仕込みを行い、醪期間25日以上の低温長期発酵によってじっくりと発酵が進みます。
発酵期間終了後に自動圧搾機、または袋吊りによって醪(もろみ)を搾り、適切な時期に火入れ、瓶詰めを行って製品化されます。